ソムリエが見た婚活の実態1
- 2010年1月25日 09:44
昨今、『肉食系女子』、『草食系男子』という言葉が大流行している。その背景としてアラサーの存在がある。彼女らは1990年代に、ルーズソックス、プリクラ、茶髪といった流行の洗礼を受け、次々に社会現象を巻き起こし流行を作り出してきた世代である。一般に30歳前後は結婚や出産を迎える時期だが、自分たちは「まだまだ落ち着きたくない」、「現役でいたい」という気持ちが強く、流行に関しても積極的に取り入れ、その為の出費は惜しまないという傾向があるのかもしれない。それゆえ恋愛や結婚に関しても主導権を握りたいという欲求が強いのではないだろうか。実際、パーティーなどで女性からは定員を超える申込が殺到しているにも関わらず男性からの申込が定員割れしているなど、ほとんど入れ食い状態である。このように肉食系女子が草食系男子を追う様は、さながら狩りのようであり、狩猟民族と言える。
主体が男性から女性に移るという意味で、これからは、男性よりも女性が店を選ぶ時代、更にはその女性が男性を引き連れてくる時代になってくるであろう。
まずは婚活の現場として飲食店・レストランでこれまでどのような事が行われてきたのだろうか。数々の婚活現場を目の当たりにしてきた"シニアソムリエ樽山香人氏"がその実態を明かしていく。
■"シニアソムリエ樽山香人氏"が語る婚活の実態
今、いわゆる高級レストランで食事をするという行為はカップルにとってはそれほど珍しいことではないだろう。レストランといっても多種多様であり、さまざまな業態が存在し瞬間的にインパクトを与えるレストランはあっても自分の隠れ家的な店が少なくなってしまったような気がする。また、今は単に合コンの会場と化しているようなところもある。
1980年代後半、銀座を中心に青山、西麻布のフレンチレストラン華やかりし頃、世間ではバブル絶頂期であった。勢いのある男性が闊歩していた。今と違い男が元気だったように思うがどうだろうか。
フレンチレストランで食事をするというのは単にその行為だけではなく、トレンドという点で最高のステータスだったように思う。
恋活から婚活へ、男たちがハンターのように(当人たちはそのつもりだが・・・女性たちが餌をまき仕掛けた網に男がかかったと言えなくもないのだが・・・)これはと思える女性をものにするためにどれほどの英知を使い、懐を痛め、貴重な時間を使ったか、また女たちはどんな白馬の騎士(表面上だけだが・・・)があらわれるのか待っている状況であった。まさにこの舞台の場としてフレンチレストランが使われたのである。
当時はソムリエであれ、サービスを担当する給仕であれ、料理人であれ男と女のために最高の舞台を整えるということに関してはプロフェッショナル意識が強かったように思う。
あるときはキューピットとして、またあるときは観客のひとりとしてソムリエが見たあの頃のあの場面、それらをいくつか紹介したい。
《演出型》
印象に強く残っているのがこの型だ。特徴はこまめに店側との打合せを好み、自己陶酔してしまう演出型である。まだ携帯が普及して無かった頃だから、何度店に足を運んだことだろう。この演出型はとにかく当日の舞台演出のために最大の労力を使う。その演出の目玉としてワインが登場するのだがソムリエとしてはまさにキューピット役を果たしていたといえるだろう。食事の時間を見事にスケジュール化し、このタイミングではこの音楽を、この料理のときはシェフが登場し料理の説明を、メインではソムリエが見事なデカンタージュの技を、最後のデザートに指輪を仕込んでいたり、とまさに舞台で繰り広げられる芝居のストーリーのように計算されていた。まったくもってこの舞台で結婚を申し込まれれば、断れる女性はいないだろうと思ったものである。機能としてのレストラン、ゲストとしての女性が受けるインパクト、など細部にわたって知り尽くした男だからできる芸当である。我々給仕部隊はひとつのコマとして機能していたわけだが見事すぎて感心したものである。
《なんでもプレゼント型》
次によくあるパターンがなんでもプレゼント型である。前提条件としては著名なワインが欠かせない。ソムリエがそのワインのストーリーを語り、徐々に男が思い描く状況に引きずりこみ、落とすパターンである。このパターンは必ずしもうまくいくとは限らない。最後に結婚を申し込んでプレゼントを渡すときに女は目が覚めるのだろうか、プレゼントという形あるもので自分の値踏みをされたように思うのかも知れない。常にあげるものと望むものが一致するわけではないということを実感したものだ。一致していれば問題なくストーリーが成り立つのだろうが、あるカップルでは女性が相手の男に対して頭から水を掛けて立ち去ったのを思いだす。まさに、《馬鹿にしないでよ》ということなのだろう。ちなみにこのときのプレゼントは夫婦茶碗だった。今だったらなかなか味なプロポーズの仕方だと思うのだが当事はバブル絶頂期、時計、指輪、高級ジュエリーと高価なものこそが価値あるもののすべてだった。
《純情型》
最後に《純情型》を紹介したい。この型は全くレストランに足を運ぶことなく、ましてやフランス料理など人生において初めての経験であり、新調したと思われるスーツもどこかしら、ぎこちなかった印象である。一世一代の晴れの舞台とでもいうのだろう。女性の前では一人の経験豊富な男として振る舞いたいという心理が働くのか、その場の雰囲気に舞い上がっているからかすべてにタイミングが悪く、先に挙げた《演出型》とは全く逆である。こういう人達はソムリエ心をくすぐるのか、どこか応援したくなる。当然、食事どころではなく、ワインを飲むペースも早い。気の利いた言葉も言えず、料理やワインの話もうわの空、ところがよくしたもので女性はこういう人達こそ信頼するのだろう。誠意こそがすべてに勝るという典型を見たような気がする。
次回乞うご期待
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