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ワインブームとワインの誤解:その13 ~酸化防止剤無添加ワイン②~

  • 2010年4月26日 09:13
  • アクシュニュース

ワイン関連コラム最近、コンビニやスーパーなどで「酸化防止剤無添加ワイン」という商品名のワインを良く見かけます。前回はその「酸化防止剤無添加ワイン」に関するお話の第1回として、ワインは酸化しやすいため一般的には「亜硫酸」が酸化防止剤として使用されることについてお話ししました。

 

「酸化防止剤無添加ワイン」はブームともいえるような活況を呈しているように見えます。今回はそんな「酸化防止剤無添加ワイン」の現状を分析し、なぜ今「酸化防止剤無添加ワイン」なのか、ということについて考えてみたいと思います。

 

★「酸化防止剤無添加ワイン」の現状

「無添加」という文言を商品名に含むワインを調べてみると、国内ビール系大手ワインメーカーの輸入原料使用ワインがずらりと並びます。そのほか国産原料のもの、大手メーカー製ではないものも存在します。外国産ワインも一部あるにはありますが、数年前の「ビオワイン」ブーム後姿を消してからワインショップなどでもほとんど見かけなくなりました。一方大手メーカーなどはここ数ヶ月のあいだに「酸化防止剤無添加ワイン」のラベルのリニューアルを行ったり、さらに新商品を投入したりしていて、その力の入れようには並々ならぬものを感じます。

 

酸化防止剤無添加ワインが市場に登場したのはさほど最近のことではありませんが、前回触れましたように数年前の「ビオワイン」ブームでは無添加ワインがいくつも紹介されたにも関わらず結局姿を消し、生産者ばかりでなくソムリエやワイン流通業者などのあいだでも酸化防止剤である亜硫酸を使用することは「常識的」なことと考えられるようになりました。

 

ところが国産の「酸化防止剤無添加ワイン」についてはその後姿を消すどころか、2年程前には大手メーカーのさらなる新規参入があるなど現在のブーム的状況となっているのです。但し実はこれらのワインは、ビオワインブームのときのような通常のワイン醸造工程内でただ酸化防止剤を使用しなかっただけの造り方のものではありません。原料輸入(輸送)や醸造行程の中で原料ブドウが雑菌類に侵されないように処理を施したり、出来上がったワインを日本酒のように加熱殺菌したり、細菌を除去する特殊なフィルターを使用して濾過するなど、製品が変質しないための処理を行なっているのです。これらの処理がなされたものは、通常の醸造法に比べて本来あるべき新鮮な果実の風味を多かれ少なかれ失っていて、しかも熱処理をされないものは冷蔵保存が必要になるなど、実は「普通のワイン」ではなくなってしまっているのです。

 

それでも一部の生産者がこだわりを持ってぜんそく患者には完全にNGである亜硫酸を全く使用しないワインを造ったり、「忌避」したりしているなら理解できます。しかし大手メーカーが揃いも揃って「酸化防止剤無添加ワイン」を出している現状は、こだわりや忌避と言うよりも、マーケティング上の施策であるとしか考えようがありません。

 

★「酸化防止剤無添加ワイン」に見るマーケティング

ビール系大手メーカーなどの「酸化防止剤無添加ワイン」への力の入れようには並々ならぬものを感じます。これにはやはり、危険性の排除や忌避という以上に、「無添加」という言葉をマーケティングに巧みに利用しようとしている大企業の姿勢が垣間見えます。

 

ここで、一般消費者が大手メーカー製の「酸化防止剤無添加ワイン」を手に取る理由を、マーケティング的視点から改めて考えてみましょう。

①商品名に「酸化防止剤無添加」とあり、酸化防止剤を全く使っていないという「安心感」

酸化防止剤である亜硫酸の有害性は前回お話しました。ぜんそく患者にはまったくNGであるだけでなく、公害の原因物質に挙げられるほどの毒性も有する物質であることが広く認識されているだけに、使用する場合にもその量は非常に厳しく制限されています。

そんな使用されているだけで「なんとなく体に良くないかもしれい」というイメージにつながってしまう消費者心理をとらえ、全く使用しない技術開発、商品開発をしていることは確かに一定の評価を得ていると言えそうです。

②「酸化防止剤無添加ワイン」という商品名の「わかりやすさ」

ワインの名前には、生産地、生産者、ブランド、ブドウ品種など、知らないと良し悪しを評価しようのないものが多いのは事実です。

「酸化防止剤無添加」という商品名は、そうしたことからくる「不安」を取り除いてくれそうな、わかりやすい言葉であることは確かです。難しいことを覚えなくても気軽に楽しむことができる「気軽さ」は、ワイン嗜好の歴史が浅い日本人にとってワインのハードルを下げてくれるのはまちがいないでしょう。

③日本国内の有名大手メーカー製という「安心感」

スーパーなどに並ぶ「酸化防止剤無添加ワイン」の多くはビール系や調味料系大手メーカーの商品で、テレビCMや電車の吊り広告などでよく見かけるようなメーカーのものです。

よく言われることですが、大衆心理というか、みんなが知っている大手メーカーの商品というと、それだけで商品イメージに「安心感」というアドバンテージが発生するのはお分かりいただけるかと思います。

加えて、輸入食品などの安全性に関する事件がこの10年ほど続いたことから、食品などの「国産」商品=国内メーカーの製品に対する「安心感」への期待も上昇中です。

1500円前後という「安さ」

大手メーカー製の「酸化防止剤無添加ワイン」は、ほとんどが500円前後という価格です。

 ワインの販売や飲食に携わっている方ならお分かりかと思いますが、2年前のリーマンショック以降高額ワインが売れなくなったばかりか、12000円以内のワインですら動きが鈍くなっています。そのような景況の中、1500円前後というのは確かに手を伸ばしやすい価格帯です。

 国産ブドウを使用するとなかなかここまで安い商品はできませんが、チリやアメリカなどで大規模生産されたブドウ果汁を濃縮、凍結して輸入し原料とすることでこの価格を実現しています。

⑤スーパーマーケットなど日常的に買い物をするお店でも買えるという「買いやすさ」

500円前後という価格帯のワインは、ワインを専門に扱っているショップなどでは安すぎてできれば主力商品としては取り扱いたくないものですが、100200円の単価商品でしのぎを削っているスーパーマーケットなどでは、逆に取り扱いたい商品です。

 規制緩和で酒類を取り扱うスーパーが増えましたが、家庭の主婦などが日常的に買い物をするスーパーでも買える「買いやすさ」というのは、もっと高価なワインにはない魅力といえます。

 

こうしてみると、「酸化防止剤無添加(という商品名)」でなくても売れそうなワインという気もしてきます。ではなぜ「酸化防止剤無添加」なのでしょうか。

 

★「酸化防止剤無添加」という付加価値

その鍵を握るのは原料にあると私は考えます。

 

国産ワインの誤解②のときに触れましたが、国産ワインは100%国産ブドウで造るとなかなか安く造ることができません。市販ワインの最低価格帯である500円前後のワインを造るには、どうしても輸入原料に頼らざるを得ない状況です。

 

ところが上の③に書いたとおり、最近は食品類は国産でないと安心できないという風潮がかなり強まっているように思います。そこで、輸入原料であっても安心して購入できる商品を造るために採用されたのが「酸化防止剤無添加」という醸造法とネーミングなのです。「輸入原料」というネガティヴなイメージを「酸化防止剤無添加」というポジティヴなキーワードで挽回しようとしたと言いましょうか、付加価値として利用したと考えられるのです。もちろん「酸化防止剤無添加」が採用される以前から500円前後の輸入原料国産ワインは造られていたのですが、外国産食品の安全性が問題になってきたときに、その対策として何か良い付加価値がないか探していたところにビオワインブームなどで「酸化防止剤無添加」ワインが登場しこの方法が採用された、ということだと考えられるのです。輸入原料ワインであっても「国産」で「酸化防止剤無添加」であれば「安心」というわけです。

 

 

それにしても、主要ワイン生産国で、その国で造られるワインで大きな売れ行きとなっている銘柄が「酸化防止剤無添加」のワインという国は聞いたことがありません。ワインの生産量、ひいてはワインの原料となる醸造用ブドウの生産量が少なく、輸入原料が多い日本独特の状況といえますが、「酸化防止剤無添加」をマーケティングに利用するという状況は日本でのワインの文化的存在感の低さを考えさせられるものです。世界中で問題なく使用されている亜硫酸=「酸化防止剤」を完全に悪者扱いしかねないこの商品名、マーケティングは、世界中の魅力的なワインを「酸化防止剤」を使用しているというだけで否定するような風潮を生み出しかねないように思えてなりません。

 

日本のワイン嗜好は歴史的にもまだまだ浅くいたし方ないようにも思えますが、それにしてもどうしてこのような状況になってしまっているのでしょうか。景況の問題を別として、このようなネーミングにしなくてもワインが普通に売れるようになるにはどうしたら良いのでしょうか。そのあたりについて次回考えてみたいと思います。

 

筆者自己紹介

ペンネーム:You

プロフィール:フランス料理店にて修業の後、最近まで都内大規模エンターテインメント施設にてチーフ・ソムリエをつとめました。

日本の中小のワインメーカーで、それこそぜんそく患者の方のための亜硫酸を使わない「酸化防止剤無添加ワイン」を、もう何十年も造り続けているところがあります。マス(大規模)マーケティングではなく、特定の誰かのために大きな利益を上げるためでもなくこのようなワイン造りをされているメーカーの方々は、「酸化防止剤無添加ワイン」を悪く言う論調が少なくないことに気をもまれておいでのことと思います。どちらのメーカーかをここでは特定しませんが、ぜんそくのためにワインの楽しみを絶たれてしまっている方々にもお楽しみいただこうというワイン造りを、私は逆に応援したいと思っています。

 

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コメント:5

鈴木 2010年5月24日 12:41

突然のコメント、失礼致します。

はじめまして、私は現在、大学院で食品の表示に関する研究をしております、鈴木(仮名)と申します。
当方、掲示板への書き込みに慣れていないもので、ぶしつけではありますが仮名で失礼致します。

酸化防止剤無添加ワインのお話、とても興味深く拝見させて頂きました。

私は研究課題として、ワインにおける『酸化防止剤無添加』表示が与える影響を経済的に分析しようと考えており、そのための情報収集を行っていた所、本記事を拝見するに至りました。

内容について、共感する点が多く、また専門的な視点による見解も勉強になりました。
また、ワインに関する記事を楽しみにしております。

しぜんな 2011年7月13日 03:47

前略。
 恥ずかしいことかもしれないけど、安く出せるうえに箔がつくとあらばドンドコ出荷する。それは日本人・日本メーカーのDNAだと思います。

 実は私ワインが全然ダメなのに、この無添加のを試してオッケーでした。
 ワイン好きから言わせたら「わかってない」「飲めてない」のは間違いないですけど。
 アルコールダメな人がビアテイスト炭酸を飲むようなものですが、喘息の方同様、なくなったら困るかなという程度に助かっています。最近ちょっと美味しいものを作ると、身内からもワイン飲め!というプレッシャーが。。。(私だけ500円ボトル。向こうは5000円)

 でもなるべくなら、無添加で売ろうとしていないラベルのサッポロ(RとW)を買うようにしています。

失礼ながら 2013年2月14日 22:52

酸化防止剤の味が不味いんですよ。
ソムリエさんはよく飲んでおられるから麻痺してるんでしょう。


一経営学者 2013年12月30日 13:32

まず、
他国で聞いたことがないから、
その状況が日本独特だから、
日本における「ワインの文化的存在感が薄い」というのは
あきらかに論理の飛躍であり、詭弁です
酸化防止剤を使わない生産方法、製造・流通管理、大量生産は
むしろ日本だからこそできるシステム設計・管理といえます
そうした面を無視して日本がおかしいと決め付ける主張には
違和感があります

匿名 2014年7月 8日 00:21

上の一経営学者さんの言うとおり!缶詰め製法、レトルトパウチ製法、特殊濾過、脱酸素包装の原理から言えば、酸素の侵入さえ防げるなら100年経っても大丈夫!腐り易いサバでも保存料が不必要な製法なわけで、缶コーヒーや100%果汁缶ジュースと同じ感覚の商品にあえて酸化防止無添加と記すところが日本人!昔から商品開発においては欧米のトレンドをパクッて日本式で売り出すのがヒットの必勝パターンなわけですから日本がおかしいと決めつけてはいけませんが、一経営者さまが言われる日本だからこそできるシステムではけしてありません。むしろ保存食を製造するシステムとしては開発費不要の原始的製法でしょう。

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