外食業にも役立つ【よその産業】の知恵 第15回 仕入原価を安くする合理的な方法 ―― ダイエー、ヨーカドー、イオンを育てた師匠の教えに学ぶ(その1)
- 2010年4月 9日 09:43
執筆 経営評論家 藤原大輝
中内功(ダイエー)、岡田卓也(ジャスコ、イオン)、伊藤雅俊(イトーヨーカドー)、藤田田(日本マクドナルド)、堤清二(西友)、高原慶一郎(ユニチャーム)の共通点は?と聞かれたら何と答えるだろうか。
これら日本の流通シーンを代表する創業経営者たちの共通点は、1人の共通の師匠を持ち、その師匠の指導に従ったからこそ大きな成功を収めたという点だ。その師匠の名は渥美俊一。大正生れで今もって存命の流通コンサルタントの草分け、我国の流通革命の生き字引と言われる人物。
その言葉の端々には、飲食業であっても、さらに現在のデフレ下でも参考になる「商売の本質」を衝いたコメントが随所にちりばめられている。
これらのビッグネームを見ればわかるとおり、師匠と弟子は同世代であり、相手によっては師匠の渥美のほうが若いことも珍しくなかった。
東大と読売新聞で渡邉恒雄の1年後輩に当る渥美は、最初は新聞記者として、街工場を診断する商工指導所を取材して歩いた経験を基に、数値分析をベースにした商店経営の記事を連載していた。
読者がその提言を実行すると、その売り場が急に売れ出すようになり、小売業経営者が渥美の周りに集まるようになっていった。
こうした渥美の半世紀にわたる指導内容をコンパクトにまとめた本が、『流通革命の真実 ―― 日本流通業のルーツがここにある』(渥美俊一 著、ダイヤモンド社、1800円)だ。1社の売上高で1兆円を超えた小売業のほとんどは、創業期から渥美の主宰する研究グループのメンバーだったというからすごい。
ユニ・チャーム創業者の高原慶一郎が、先般日経新聞に「私の履歴書」を連載していた。ここでは、アメリカへ視察に行ったら生理用品がスーパーの目立つ場所に堂々とセルフサービスで売られていて衝撃を受け、日本で最初にこの売り方を導入したのは自分だというようなことが書かれていた。
渥美の著書では、高原をアメリカ視察に連れて行ったのは渥美で、その売り方を日本の小売業で実験して有効性を検証したのも渥美であって、生理用品やコンドームが自由に買えるようにしたのは自分だということになっている。
アサヒビールの「スーパードライ」を成功に導いたのは自分だ、と自称する人物がいまだに何人も現れるのと同じ現象で面白い。
それでは、渥美の指導内容の一端に触れてみよう。
① 1店舗の売上高は一定に抑えなければならない
これは通常の店舗経営者の発想とは逆である。1軒の店で売れるだけ売りたい、限界に挑戦したい、と考えてしまうのが人情というもの。
ところが、これは渥美によれば「繁盛店志向」という"経営者の病気"に分類され、戒められている。
売上高が一定水準を超えると、店舗内の作業量が増え、作業の質が変わって品質管理がおろそかになって競争に負けてしまうのだ。(前掲書205ページ)
この渥美の持論を最初に導入したのは藤田田で、銀座4丁目に開店したマクドナルドの1号店が繁盛し始めたことを喜ぶどころか、問題視したという。マクドナルドでは、1店の売上高が2割以上増えることを禁じており、もし超えた場合には必ず近所にもう1店つくることになっている。
② 合理的に安く売るコツは、原料段階から所有権を持つこと
デフレの日本では、PB(プライベート・ブランド)商品の開発が大流行している。PBは今に始まったことではなく、アメリカのスーパーでは当初からPB(渥美の用語ではSB=ストアブランド)こそがスーパーの存在意義だったと言っても過言ではないくらい、PBが浸透している。
日本では、販売店がメーカーに直に発注して開発してもらうのがPBだ、と考えている経営者や商品開発担当者がいる。実はこれは渥美に言わせると、大きな間違いだ。
販売店がメーカーと直結して、中間の流通業者を省く。だから価格が安くなる。 ・・・という発想は間違いだと断じている。
何故なら、多くの店舗網を有する小売業者であれば、メーカーと店舗を結ぶ問屋・卸売業が不可欠というのが渥美の理論であり、そこよりも莫大なマージンが無為に乗せられている部分に着目しなさいという。
それはどこかといえば、製造とそのさらに前の段階だ。材料段階から最終加工製品に至る各々の加工段階において、そのたびごとに介在している各種の問屋こそが無用なのである。
だから、売価を下げたい、つまり仕入れ値を下げたければ、材料段階から小売業が所有権を持ち、製品加工段階のすべてを「委託加工」に転換せよと説く。(前掲書260ページ)
これは欧米のチェーン小売店のPBでは普通に行われていることだ。日本では、まだ出来上がった製品の全量買取を約束することが始まった程度だから、まだまだPBの価格優位性には限界があった。
そこへ、渥美の門下生でない柳井正が全量一貫生産・自社直売で殴り込みをかけた。ユニクロである。
渥美の著書をよく読んでからユニクロの戦略を見つめなおすと、どれもこれも渥美の理論を忠実に実行していることがわかる。
AOKIやしまむらは門下生だが、門外漢のユニクロによって渥美門下のスーパーや百貨店のアパレル部門が瀕死の重傷を負わされているのは、なんとも皮肉な現実だ。
(次回に続く)
【次回予告】
外食業でも使えるよその産業の知恵
第16回 仕入原価を安くする合理的な方法 ―― ダイエー、ヨーカドー、イオンを育てた師匠の教えに学ぶ(その2)
・ 売上規模が小さくてもPB商品開発を可能にする秘策とは?
コメント:0
トラックバック:0
- この記事へのトラックバックURL
- http://aqsh.net/webapps/mt/mt-tb.cgi/415














