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外食業にも役立つ【よその産業】の知恵 第13回 高い業績を維持するための恐ろしい秘訣――米国企業数千社に学ぶ

  • 2010年2月24日 11:24
  • アクシュニュース
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13回 高い業績を維持するための恐ろしい秘訣――米国企業数千社に学ぶ

 

執筆 経営評論家 藤原大輝

 

 

「旗を振っているのだが踊ってくれない」と嘆いている経営者。カリスマ的なリーダーシップのある後継者を探そうとしている経営者。自分が退任した後も継続的に好業績を維持できる会社にしたいと考えている経営者。わたしは、このような悩みを抱えている人々に対して、心より同情する。

なぜなら、このような悩みは、通常、決して解決されないからだ。

しかも、書店に行って買い求めた幾多の本は、必ずといってよいほど期待はずれだからだ。

そんな中に、殆ど唯一の例外といってよい本が現れた。上のような悩みを抱く経営者には最適の1冊と断言できる。経営者でない人にも、組織の管理に携わる人には必読の書として奨めたい。

 

 

 

『ビジョナリーカンパニー② 飛躍の法則』(原題:Good to Great、ジェームズ・コリンズ著、山岡洋一訳、日経BP刊、2200円)がそれだ。

凡百のビジネス書ではない。それは、思いつきの「あるべき論」ではなく、少数の目立つ事例から強引に導き出した「成功法則集」でもなく、まして、たまたま大過なくリタイアした元経営者か、経営をしたこともない学者や評論家による「有難いお説教集」のいづれでもないからだ。

本書は、純粋な学術研究のレポートである。要するに、「事実」の集大成である。

経営学大学院の研究者20名が、さらに多数の調査スタッフを使い、数千社の米国上場企業を50年以上にわたって業績を調べたうえで、「偉大な」業績を維持している11社を抽出し、その11社と競合関係にある(あった)「優良だが偉大ではない」企業群と、あらゆる側面から徹底的に比較対照したものである。

それは、膨大な業績データ、雑誌や新聞の記事などの山に分け入るだけでなく、多くの企業経営者への直接インタビューなども含まれ、5年の歳月にわたる詳細な調査と議論の成果である。

初めに結論ありき、あるいは理論や仮説を立てて、それを予定調和的に証明していく手法ではなく、先に事実の積み重ねを経た上で、「偉大な」企業だけに共通している「事実」を炙り出すことを極めて抑制的な態度でやり遂げている。(ご丁寧なことだが、この成果を一般化するに当っての統計学的有意性も検証済だ。)

このように、初めに仮説も結論の目星すらも立てずに、ただ闇雲に膨大な数字と格闘したりインタビューの回数をこなすという調査手法は、普通は「最も愚かなアプローチ」として忌むべきものとされている。それを、臆面もなくやってしまったところに、小賢しさと対極の、良く言えば愚直とでも評すべき、悪く言えば結果オーライなプロジェクトである。

もしこれが、冒頭に挙げたような「べき論」や「お説教」であれば、「自分はそうは思わないぞ」という感想を随所で抱くこともよくあるのだが、何しろ、著者の考えや意見が表明されているのではなく、あくまでも事実が羅列されているに過ぎないから、反論のしようがない。「うーむ、そうなのか・・・」と嘆息して黙り込むほかない。「この著者は視野が狭いな」とか、「この結論は論理が飛躍しているぞ」などと通常のビジネス書には感じてしまう読者側の優越感を抱かせることがない。最後まで著者ペースで進んでしまうし、読み飛ばせるような箇所も少ないので、読破するには骨が折れる。

 

こうして読まされる「事実に基づく調査報告」には、我々のこれまでの常識を覆す内容も多い。興味深いことに、日本の常識だけでなく、アメリカの産業界や経営学者の常識をも覆す事実が次々に出現している。

たとえば、こうである。

「明確で説得力のあるビジョンを提示し、その実現に向けた社員の努力を生み出し、より高い水準の業績を達成するよう組織に刺激を与える」ことのできるカリスマ的な経営者は、「有能な経営者」(レベル4)ではあるが、「偉大な経営者」(レベル5)ではないというのである。そして、組織に発生するあらゆる出来事を何でも「トップのリーダーシップ」で説明しようとすることは、難解な科学的事実を「すべては神のなかにある」と言って済ませてきた中世に逆戻りすることだと警鐘を鳴らす。

また、偉大になれない企業においては、「繰り返し改革の方針を掲げ、腕を振り上げて改革を説き、カリスマ的なリーダーが活躍しているが、霧の中の手さぐり状態からめったに抜け出せていない」という指摘は、できない企業の内情を見透かされているようで、読んでいると恥ずかしくさえなってくる。

そして、とどめを刺すように、「従業員や幹部の動機付けに努力するのは、大部分、時間の無駄なのだ」と来る。返す刀で、「今回の調査の結果をうまく実行に移せば、従業員の意欲を引き出すために時間とエネルギーを費やす必要はなくなる」として、「(凡庸な状態にいるよりも)偉大さへの道を歩むほうが犠牲が少なく、おそらくは仕事の量も少ない」のだそうだ。

 

おいおい。それが出来れば苦労はないよ。それが出来ないから、多くの経営者は困っているのだし、薬にもならないお説教だけのビジネス書なんかをつい買ってしまうのではないか!

読者は誰しもそう思うだろう。だから、本書では最初から「How」がいろいろ提示されている。その中でも最も重要なメッセージは、「適切な人をバスに乗せ、不適切な人をバスから降ろす」である。

仮にそれが難しい公的組織であっても、時間をかけてでも実行せよと。傑出した人材が不足している中小企業の場合にも、「組織の最上層部については、適切な人材が見つかるまで雇用しない規律を絶対に守らなければならない」し、「不適切な人を主要なポストにつける」ことが最大の誤りであると注意している。それが、たとえ創業したばかりのベンチャー企業であってもこの原則を曲げてはならないのは、「どの企業も、成長を担う適切な人材を集められるよりも速いペースで売上高を増やし続けながら、偉大な企業になることはできない」という法則があるからだと突きつけられる。(そのほかにも、経営の実務上役立つHowが事実を基に次々紹介される。)

 

いやはや、事実、事実で迫られると、逃げ道がなくて息苦しい。

しかし、ヘンテコな精神論を上から目線で押し付けられるのとは違って、非常に爽やかな読後感が残る。旗は振っても踊ってくれないと嘆いている経営者、カリスマ的な後継者を探そうとしている経営者、自分が退任した後も継続的に好業績を維持できる会社にしたいと考えている経営者などには最適の1冊と断言できる。経営者でない人でも、組織の管理に携わる人には必読の書として奨めたい。

ただし、読んだ結果として、あなたの会社を良くするには、トップであるあなた自身が退任すべきという解決策が導き出されるかもしれない。よって、現在の地位に恋々とする向きには奨められない本といえる。

逆に、あなたの会社のトップに読ませたいと思う幹部は、その人の机上にそっと置いておくという手もある。もっとも、バスから降ろすべき人を取り違えて、部下であるあなたが返り血を浴びる羽目になってもわたしは責任を取れないが。

 

(なお、本書はこれより数年前に出版された同じ題名の『ビジョナリーカンパニー①』の続編ではなく、著者の構成も代っていて①と②とは関係性が遮断されている。②だけ読めば①を読む必要はない。)

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