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ワインブームとワインの誤解:その10 ~国産ワインの誤解 その3~

  • 2010年1月22日 15:49
  • アクシュニュース

ワイン関連コラム皆さんは「国産ワインて甘くないですか?」という声を聞くことはありませんでしょうか。かく言う自分も実は数年前まではそう思っていました。確かにかつて国産ワインといえば甘口という時代が長かったのは事実ですが、最近は辛口ワインの生産量が増えていて甘口はむしろ見かけなくなってきています。しかしながら、かつての甘口のイメージが根強く残っているようなのです。

 

というわけで今回は国産ワインが甘口から辛口に変わってきた状況について少し詳しくお話ししたいと思います。

 

★なぜ国産ワインは甘口に造られてきたか?

このコラムの第1回でお話ししましたが、ワインは明治時代以降の外来嗜好品で、はじめは甘口のワインから広まりました。当然国産ワインも始めは甘口に造られていました。その後何回かのワインブームを経てワイン嗜好の主流は辛口となりましたが、なぜか国産ワインは最近まで主に甘口に造られていました。「国産ワインて甘くないですか?」という今では「誤解」ともいえるイメージは、辛口が主流になってきたにも関わらず国産ワインが甘口に造り続けられたことによると考えられますが、実はそれには単に甘辛嗜好の問題を超えた理由がありました。

 

前回、輸入原料が国産ワインに使用されているというお話で、日本の気候が食用のブドウ栽培には向いていても醸造用には向いていないこと、そして旧農地法や生鮮ブドウ流通(の市場原理)にも原因があるというお話をしましたが、実は国産ワインが以前甘口に造られていた理由もこれらの事情なのです。

 

日本では醸造用に食用ブドウも多く転用されてきたのですが、食べて美味しい「みずみずしい」ブドウは、醗酵してワインになるとエキス分の乏しい水っぽい味わいになってしまいます。そして含まれている糖分を完全に醗酵させて辛口に仕上げると、水っぽい味わいのために酸味が突出して感じられる、つまり薄くて酸っぱいワインになってしまいます。薄くて酸っぱいと薄めたレモンジュースのようになかなか心地よく飲めないものです。そこでなんとか飲めるように味わいのバランスを取るために、醗酵を完了させずに途中で止めて糖分を残し甘みのある味わいに仕上げたのです。レモネードと同じで酸味だけでなく甘みを持たせることで、軽いながらも甘酸っぱく飲みやすいワインにすることができるのです。

 

醸造用につくられたブドウをワイン生産者がなかなか入手できなかったために食用ブドウを醸造用に転用していたことが、最近まで国産ワインが甘口に造られていた理由なのです。では、どうしてそのような状況になってしまっていたのでしょうか。前回その点を詳しくお話ししませんでしたので、ここでご説明しましょう。

 

★醸造用ブドウのつくり方

醸造用ブドウをつくるには、食用向けにはなされないような栽培がおこなわれます。日本は食用ブドウづくりには向いている気候なので、ある程度水はけの良い土地さえ選べば、棚仕立てで1本の木からたくさん実を収穫しても糖分や水分が豊富な良い食用ブドウがつくれます。しかし糖分だけでなくエキス分に富み水分は少ない醸造用ブドウをつくるためには、ちがう栽培法を採用しなければなりません。

 

例えばブドウの木の仕立て方を日本では標準的な棚仕立てで採用されている長梢剪定やX字短梢剪定から、一文字短梢剪定に、あるいは棚仕立てをやめて垣根仕立てに変更することで自然と房の数が減り、粒も小さくなります。粒が小さく見た目に房はスカスカで不恰好、しかも水分は少なくみずみずしくはないため食用向けには売りにくいのですが、これが糖分、エキス分に富んだ醸造向けの良いブドウなのです。

 

★醸造用ブドウを調達できなかった本当の理由

戦前の小作農制の弊害を解消し自作農を旨とする旧農地法は、企業法人の新規の農地取得を制限するものでした。東京オリンピック後のいわゆる第1次ワインブームで日本人のワイン消費が本格的に始まり、国内のワイナリーもワイン生産を本格化させようとしたときに障害となったのが実はこの旧農地法でした。戦前に土地を取得していたワイナリーは所持を留保されていましたが、それ以外のワイナリーは組合などごく一部の例外を除いて新規の農地取得が禁止されていたため、より多くの原料ブドウを調達するには農協などから購入するしかありませんでした。

 

既述の通り食用ブドウからは品質の良いワインを造ることはできないのですが、一般に流通しているブドウは食用でした。ワイナリー側としては醸造用を調達したいため農協や一部農家に栽培法の変更などを働きかけましたが、簡単に聞き入れられるものではありませんでした。食用につくれば値段がより高く売れるものが、醸造用につくるためにはさらに手間がかかり収量を制限する上にさほど高く売れないとあって、普通に出荷したのでは明らかに収入(売上)が下がってしまうことになるからです。

 

★それでも高品質の国産ブドウ使用ワインを造りたい!

自社で農地を所有しブドウを自家栽培しているワイナリーがないわけではありませんが、自家ブドウで多くをまかなえるワイナリーはほとんどありませんでした。こうした事情から各ワイナリーとしては本来は醸造には向かない食用ブドウからワインを造らざるをえないという不本意な理由で、あまり品質の良くないワインを造るしかなく、苦肉の策として甘口に仕上げたり、外国産ワインをブレンドするなどの対応をしたのです。しかしワイナリーとしてはきちんと醸造用につくられたブドウから、高品質のワインを造りたいという情熱を捨てることはできませんでした。

 

いくつかのワイナリーは栽培農家と農協などに卸すのとはちがう特別な価格体系の契約を直接結び、醸造用に栽培してもらうよう働きかけていきました。それだけでなく栽培法の変更のほか、配水管を整備するなど畑の水はけをさらに良くする施策をしたり、畑の環境、状態を分析してより醸造に向くブドウができる畑を選別したりするなど、さまざまな研究や改革も行われてきました。そして最近はそうしたワイナリーの熱意を理解し協力する栽培農家が増えてきて、ワイナリーは望んでいた醸造用ブドウを調達することができるようになってきたのです。当然原料コストは上昇しますが、企業努力で製品価格への影響を最小限にとどめてきました。こうして国産ブドウを使用したワインの品質が徐々に上がってきて、「国産ワインが美味しくなってきた!」いう今の状況を迎えるに至ったのです。

 

★国産ワインも辛口へ

前回もお話しましたとおり国産ワインは国産ブドウを100%使用したものだけではありませんから銘柄にもよりますが、国産ブドウを使用したワインがこのところ美味しくなってきたのはこのような生産者の努力によるものなのです。そしてその結果、日本のワイン生産も主流は辛口になってきたのです。

 

そして昨年末、会社法人の農地取得を制限してきた農地法が改正されました。これによってこれまでブドウ栽培地域でも起きていた耕作放棄問題が解消されていくことが予想されるばかりでなく、ワイナリーの農地取得が可能となって醸造用ブドウをワイナリーが自家栽培・調達することができるようになり、さらなる原料ブドウの改善、ひいては国産ブドウ使用ワインの品質向上が期待されます。辛口の国産ワインはますます美味しくなっていくでしょう。「国産ワインは甘い」という認識は本当に過去のものになりつつあるのです。

 

 

 

ところで、冒頭の「国産ワインて甘くないですか」という声には「だからあまり飲まないんです」というメッセージも含まれているように思います。辛口か甘口かは嗜好の問題なので一概にどちらが良いと言えるものではありませんが、甘口の国産ワインは和食に意外とよく合うということをご存じないとしたら、ちょっともったいないと思っています。

 

ということで、次回は「甘口国産ワインは和食に良く合う」という話題を中心にお話ししたいと思います。

 

筆者自己紹介

ペンネーム:You

プロフィール:フランス料理店にて修業の後、最近まで都内大規模エンターテインメント施設にてチーフ・ソムリエをつとめました。最近感銘を受けた国産ワインをもうひとつ。「山梨ワイン(メーカー名:一般名詞的な山梨のワインという意味ではありません)」の「七俵地畑シャルドネ」でした。この畑は山梨ワインの自社畑で、生産者の野沢たかひこ氏が自然農法でブドウを栽培しています。これまで美味しいと思ってきた国産のシャルドネは山形県か島根県のもので、山梨県のシャルドネで初めて美味しいと感じたものです。野沢さんの技術や情熱と、この畑独特のいわゆる「テロワール」がなせる業でしょう。よく、出来の良いシャルドネを「まるでモンラッシェのようだ」などと言いますが、モンラッシェは言い過ぎとしても(笑)ピュリニーモンラッシェにならたとえてもいいのでは、と思うくらいバランスが良く果実味の豊かなワインでした。

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