飲食店失敗の研究 第20回「居抜物件で開店詐欺か?」
- 2009年6月10日 15:46
サラリーマン向けの飲み屋の居並ぶ商店街に、A店がオープンしたのは今年の1月だった。居抜店舗を紹介する専門業者からの紹介で、僅か6坪だが自分の1号店を開店させたのはBさん。
Bさんは、ある有名な外食企業の社員として勤務していたが、会社には内緒でサイドビジネスを始めた格好。だから、店に出るわけには行かないので、店長には旧知の料理人であるCさんをあてがい、対外的にはCさんがオーナー板前ということでスタートした。
ホールには、Cさんが以前自分とペアを組んだことのあるDさんに声をかけて、開店メンバーになってもらった。
Cさんは経験を積んだ料理人だけあって、メニューの構成も味の作りこみも堂に入ったものだった。この商店街のサラリーマン向けとしては平均よりも若干高めの価格設定ではあったが、サブプライムショック後に出店していることもあり、客単価を3千円台に抑えようという意図はあった。
1月のオープンだから、1月、2月は我慢のときだということは、最初からわかっていたことだった。
それにしてもお客の入りが悪かった。内装は居抜のまま極力資金を投下せず、お客には最低限のしつらえだった。それでもCさんとDさんは一生懸命に毎日店を開けていた。
3ヶ月目に入り、本来であれば、そろそろベースになる固定客らしき層が形成されてくる時期だった。突然、Aさんと連絡が取れなくなった。自宅にも携帯にも応答がなくなった。
結局、業者への支払いだけでなく、店舗従業員への給料も.未払いのまま、Aさんは失跡する。
考えてみれば、超人気の商店街に路面店を開業するにしては、事業の計画は甘いところだらけだった。Aさんには、はじめから事業を成功させる積りがなかったのではないか?とささやく関係者もいるくらいだ。
運転資金の融資には渋る銀行も、新規店舗の開業というイベントには、設備投資という大義名分が立つ分だけ貸す側としての姿勢が緩くなる傾向がある。こうした状況を巧みに利用した、詐欺まがい行為ではなかったのかと被害者は自問を続けている。
この連載は、すべて実話を基に構成しています。(杭杉能美子)
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