外食業にも役立つ【よその産業】の知恵 第2回 トヨタ生産方式の極意をコンパクトに学ぶ(その2)
- 2009年9月10日 12:11
■第2回 トヨタ生産方式の極意をコンパクトに学ぶ(その2)
前回は、世界中の製造業がこぞって採り入れようとしているトヨタ生産方式をわかりやすく解説した本を紹介した。(『トヨタの上司は現場で何を伝えているか』PHP新書)
著者の若松義人さんは、トヨタ生産方式の生みの親で、製造業の現場改善の世界ではいまや神格化された存在である大野耐一氏に生産、原価管理、購買の各部門で直接の指導を受けたまな弟子というから、書店で多く陳列されているトヨタ式の解説書のように外部の評論家が書いているものとは現場感が違う。
「ミスをしようとしても絶対できない置き場作り」「できない理由は、できる理由の裏返し」などについては、前回のメルマガをご覧頂くとして、今回は「できない部下の活用法」と「難題への挑戦」を紹介する。
どの組織にも「できない部下」がいる。上司はできる部下を欲しがり、できない部下をうとんじる傾向がある。それは上司だけではない。会社自体も、できない社員を疎外しがちだ。
だから、一般には「まず人材を選ぶことが重要だ」などと言われている。
ところが、トヨタでは正反対だ。トヨタ式人づくりの根底にあるのは、「選ぶより育てる」なのだ。
だから、世間の経営ノウハウで必ず言及される「2・6・2」の原則(できる社員が全体の2割、会社の足を引っ張るようなマイナスの社員も2割、どちらでもない平均値が4割の分布になるという経験論)はトヨタでは否定されている。それどころか、トヨタ式では「知恵はみんなに平等にある」と考える。
著者の若松氏は「部下の知恵が出ない、能力が伸びないのは上司に問題がある。問題のある上司に限って、部下をできる、できない、で選別したがるものだ」と断じる。
ただし、ここで重要な前提がある。
このような、人間を性善説でとらえて育てていくには、忍耐が必要だ。
トヨタでは人づくりには30年単位で考えているという。ずいぶんと気の長い話ではないか。トヨタでは「自分が教えられ、育てられた『恩』は、部下を教え、育てることで返す。泥臭いようだが、これがトヨタ式の『人づくり』だ。(中略)回り道にも見える。だが、実はこれが人財育成の一番の近道である」と信じられているのだ。
次に、トヨタといえば「カイゼン」という用語に凝縮されているように、小さな改善を現場で日々積み重ねていくのがトヨタ方式であって、革命的な変化とは無縁だと思っている人も多いだろう。
しかし、厳しいグローバル競争を勝ち抜き、ついにアメリカのビッグ3をも撃破したトヨタは、要所要所ですさまじい難目標を掲げることがあるのだ。
そういうときには、「どう考えてみても、到底不可能」な、飛躍した目標数値を与えるのだ。昭和20年8月15日の終戦の日に、当時の豊田喜一郎社長は、「3年でアメリカに追いつけ」と檄を飛ばしたという有名な話があるが、それが単なる昔話で終らず、その後の成長期になっても引き継がれているところにこの会社の凄さがある。
昭和40年代には、当時平均3時間かかっていた作業を「3分でやれ」という大号令が下った。3時間を2時間に縮めろ、という指示ならよくあることだ。それを、60分の1にしろという。
誰しも、「そんなの不可能だ」と思うはずだ。普通の会社なら。
しかし、トヨタは違った。徹底的に考え抜き、また、社外の知恵も探し回った。
その結果、その作業の仕組み自体を根底からひっくり返す革命的な改善が開発され、ついに3ヵ月後には、本当に3分でできるようになったというのだ。これで、「はるか先を行っていたアメリカの自動車産業の背中が見えてきたのである」。
要は、日常の小さな改善と、何年に1度の大きな変革を組合せて絶え間なく実行するのが、強い組織をつくるもとになっているということだ。
このメルマガを読んで頂いている外食業の経営者の皆さんも、日常の現場改善に熱心に取り組んでおられると思いますが、たまには、現場の常識、外食産業の常識をひっくり返すような、「超・難題」を掲げて、革命的な飛躍を目指してみてはいかがでしょうか?
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