飲食店失敗の研究 第17回「ベテラン板長の新規店、古典的すぎる料理内容でお客がつかず」
- 2009年4月10日 15:37
都心のビジネス街。オフィスが立ち並ぶ一角に板前割烹のA店が新規開業した。
ほど近い歓楽街で高級鮨店を営むオーナーのBさんが、2軒目として居抜き物件を買い取ってオープンさせた店だ。
Bさんは飲食業界にいろいろなネットワークを持っている。こんどのA店の板長兼店長には、和食界の重鎮ともいえるベテランCさんを引っぱって来た。Cさんといえば、和食の業界では知る人ぞ知るという存在。キチンとした経験を積んだ料理人が、一品ずつ手をかけた料理を食べさせる店は、最近ではとんと珍しくなった。
そのうえ、サービスのほうも他店でホールを仕切っていたベテラン女性を"女将"という位置づけで配置した。「ベテラン板長とベテラン女将による和食の店がビジネス街にオープン!」と来れば、誰しも成功を疑わなかった。
内装は高級感に溢れ、板前割烹らしいカウンターのほか、接待や商談にも向く個室も設けられていた。料理は、さすが大御所の料理とうならせるような、和食の王道を行く献立だった。ドリンクの価格設定も、都市ホテルの和食店などと比べるとお買い得感にあふれていた。
それなのに・・・
オープンから1年経っても客足は上向いてこない。
板長兼店長のCさんの嘆きは、月を追うごとに深まっていった。おりしも金融ショックが襲う。世界同時不況のせいにしたくなることもあった。
だが、どうやら不景気ばかりの問題とも言い切れなかった。
経験豊富な板長による料理構成なので、オーソドックスなメニューだった。しかし、老舗の看板でお客を集めるのではなく、街場で新規開業した店としては、新しいお客を集め、かつリピート来店を促進するような魅力を持たせなければならない。その面では、オーソドックスなメニューが逆に災いした。よくいえば古典的だが、多くのお客には新味に欠けると映ったのかもしれない。
女将と仲居さんによるサービスも、一見さんには敷居が高く受け取られた恐れもある。名前の売れていない新規店は、まず常連客のベースとなる総来店客数、とりわけふらっと来店する一見のフリ客数をいかに積み重ねていくかにかかっているが、A店ではその努力が不足していた。セールス活動らしき動きも見られなかった。
こうして、A店はベースとなる顧客基盤が構築できないまま、開業から2年を待たずに幕を閉じた。
この連載は、すべて実話を基に構成しています。(杭杉能美子)
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