新連載 ≪予告編≫ 外食業にも役立つ【よその産業】の知恵
- 2009年8月25日 11:40
執筆 経営評論家・藤原大輝
~~連載に当って~~
外食産業は、お店のコンセプトの企画、店舗の作りこみ、スタッフの教育研修、サービスレベルの向上、徹底した衛生管理、エリアマーケティング、顧客管理、そして多店舗展開すればチェーンオペレーションの理論やブランド戦略など、製造業から流通業、サービス業、お客様の健康管理の面を含めると医療に近いところまで、ありとあらゆる産業のエッセンスを包含した極めてスパンの広い商売です。そのカバー範囲が広範に及ぶために、ともすれば却って視野が狭くなり、同業者の動向ばかりを気にされている経営者の方々を散見します。
そこで、他産業で成功を収めているノウハウを簡便に学ぶことが出来る書籍を紹介し、皆様の企業の発展に僅かばかりでも参考になればと思い、連載させていただくこととなりました。
第1回(次回)は、米国ゼネラルモータース崩壊のあと、世界最大にして最高収益を誇る自動車メーカーの地位に君臨したトヨタの誇る「トヨタ生産方式」を学ぶ書籍を採り上げます。類書は多いのですが、忙しい皆様が簡単に理解できるようコンパクトにまとまめられた書籍は殆どありません。その中で、飲食業の「現場」にも参考になる図書をご紹介し、どこがどのように活用できるかご案内いたします。
■第1回 トヨタ生産方式の極意をコンパクトに学ぶ
世界に冠たるトヨタの生産方式は、いまや世界中の製造業のみならず、正確で効率的な仕事を身に着けようとするあらゆる産業の経営者がこぞって導入をもくろんでいる。
同じ産業において、競合他社がトヨタ生産方式をマスターして自由に操っており、一方で自社が従来のやり方で日々悪戦苦闘しながら営業しているとしたら、それはB29に対して竹槍で迎え撃とうとした60余年前を笑うことは出来ない。
しかしながら、トヨタ生産方式は簡単ではない。マスターするのも難しいが、理論自体を読むことが難解を極める。
それは、自動車産業、もしくはラインによる組み立て産業であることが暗黙の前提になっているため、他産業で導入しようとしても、用語の「翻訳」のみならず、工場という操業現場の常識を知らないと、言っていることが理解できないからだ。かくいう評者も20年以上前になるが、自動車生産管理の専門家に奨められて、この分野の原典中の原典である大野耐一・著『トヨタ生産方式』を読んだけれども、自己の視野も狭かったせいもあるのだろうが、著者の凄さが伝わってこなかったことを覚えている。
そんな中、一昨年に出版された『トヨタの上司は現場で何を伝えているか』(PHP新書、720円)は、我々のような製造業の素人でもわかりやすく自分の仕事に応用できるように平易に解説されている珍しい1冊と言える。新書でコンパクトなのもいい。
しかも、著者の若松義人さんは、トヨタ生産方式の生みの親で、製造業の現場改善の世界ではいまや神格化された存在である大野耐一氏に直接の指導を受けたまな弟子である。トヨタでは、生産、原価管理、購買の各部門で大野氏に直接教えてもらったというから、隅から隅まで大野式が身についている。
そればかりか、その後、多くの他産業でトヨタ式を導入する支援を現地に張り付いて行なってきた経験があるから、言うこと書くことにいちいち説得力がある。
たとえばこうだ。
ある組立工場を見学に行ったら、パートの人たちが複雑なものをノーミスで組み立てている。しかも、ごく普通のことのように、まったくストレスなく高品質を実現しているのが不思議でならなかった。そこでよくよく見てみると、作業場の設計や、部品の配置などが「間違えようと思っても間違えられない」ほど考え抜かれていることに気づいた。
トヨタ式では、「モノを探すな、モノを取れ」が合言葉だそうだ。探すから間違える。手を伸ばせば取るだけにしておけば、ミスが防げるというものだ。
これを読んで、「工場は広いから飲食業の厨房には適用できない」などと考えてはいけない。トヨタは為替差損などグローバルな競争に晒されている。与件の厳しさは飲食業にも劣らない。「できる/できない」を「場所の制約」という「できない理由」に逃げ込んでは改善はおしまいだ。
著者は言う。「できない理由」は、経営者にとっては「クリアすべき課題」であり、それさえクリアすれば「できる理由」に早変りするのだ。大きな前進の前ぶれなのだ。
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